The chefs and

VERMICULAR

03

Shinobu Namae

生江 史伸

L’Effervescence / Nishi-azabu #02

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SPECIAL COLLABORATION

オリジナルバーミキュラが
できるまで

生江史伸 × VERMICULAR

Shinobu Namae

L’Effervescence, bricolage bread & co.

 バーミキュラ開発チームはこれまでスターシェフの要望を形にする数々のコラボレーションを手掛けているが「レフェルヴェソンス」「ブリコラージュ ブレッド&カンパニー」の生江史伸シェフとのあいだにも斬新なオリジナルモデルが誕生した。

 生江シェフのリクエストは「小さなサイズの鍋」。自宅でもレストランでもバーミキュラを愛用するシェフだが、「ブリコラージュ ブレッド&カンパニー」でお客様にそのまま提供できるものはないかと相談があった。当初バーミキュラ開発チームはスキレットを提案したが、シェフからパンも焼けるような形にして欲しいという要望があり、オリジナルモデルの開発プロジェクトがスタートした。

 初回のミーティングでは、バーミキュラ開発チームとブレインストーミングをしながら、生江シェフがその場でスケッチを描き、機能と容量のリクエストを伝えた。

 「レストランでの使用を想定すると、かなり具体的な内容になります。たとえば、コース料理のなかでバーミキュラを使ったメニューを一品提案したいと考えると、テーブルに載せたときに邪魔に感じないサイズ感はとても重要。また側面が垂直に立った鍋はフォークやスプーンを入れにくいので、底との接点の角度をゆるやかにして、料理をすくいやすい形にしてほしいということも伝えました」。

 ディスカッションのなかで、せっかくフタがあるのだから、皿のように使えるといい、鍋部分でパンを焼いて、お客様に提供するときは、フタを皿のようにして出せるようになどと具体的なイメージが固まっていった。

 ミーティングで広がったそれらの条件をクリアしたデザインを起こし、3Dプリンターで型を制作。シェフが実際に型を持ってみて、こうするとより使いやすくなると感じた点を指摘。

 修正点を改善した型ができたら、いよいよ試作品をつくる。シェフ自ら現場に入り、生まれてはじめての鍋づくりに挑戦した。

 「実は、参加する前はもっとオートメーション化された現場をイメージしていたんです。大事なことは機械に任せ、人間はそのスイッチを操作するだけ、というような。でも実際はまったく違いましたね。たとえば炉で熔かした鉄を型のなかに注ぎ入れる工程にしても、かかる秒数でまったく違う結果になってしまう。職人の技術に支えられた、緻密な手作業の工程が多いことに驚きました」。

 生江シェフのリクエストが叶えられただけでなく、開発チームからのアイデアによって鍋の使い勝手が格段にアップしたことにも感激しているという。

 「バーミキュラの最大の特徴である鍋の密閉性によって、フタが開けづらいときがあった。フタと本体の取っ手をずらせばいいのですが、忙しいレストランではその動作がスタッフの負担になることも。そう伝えると、ずらさなくてもフタが開けやすい鳥のくちばしのような愛らしい取っ手の形状を開発してくれたんです」。

 当初はもっとトライ&エラーをくり返す覚悟でいたが、この試作品に心から満足しさっそくレストランやベーカリーにも導入している。

 「バーミキュラのものづくりの現場で、職人さんが技術に誇りを持って『おいしさ』を伝えようとする姿に、深い共感を抱きました。僕も、自分の店で働いてくれるスタッフたちは職人集団だと考えていますから。『おいしさ』とは、ただ料理の味だけではない。素材から盛りつけ、お客様との対話までを通して、多角的に、真摯に伝えていくものなのだと、あらためて学ばせてもらった気がします」。

bricolage bread & co.

東日本大震災後の2012年、東北の地での炊き出しで、生江がつくったホワイトソースの煮込みハンバーグを「ル・シュクレ・クール」岩永歩がつくった真っ赤なビーツのパンにはさんで、仮設住宅で避難生活を送る人々に食べてもらったことがきっかけとなり、欲しい場所があるのならば自分たちでつくってしまおうという想いで実現したベーカリーレストラン。スカンジナビアのコーヒー文化を伝える「フグレントウキョウ」小島賢治も参加し、3人がつくる幸せな時間を過ごす場所として多くの人に愛されている。

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